「カードは使えますか?」――この質問が来た時点で、すでに信頼は揺らいでいます

外国人旅行者から予約の問い合わせが届き、やり取りをしているうちに「クレジットカードで払えますか?」と聞かれる。そのたびに「現地払いのみです」「銀行振込でお願いします」と返答している事業者の方は、少なくないかもしれません。

しかしその瞬間、旅行者の頭の中では「この施設、大丈夫かな」という不安が生まれています。

現金を持ち歩く旅行者は年々減っています。海外旅行に出発する前にすべての予約をカードで済ませ、現地では電子決済だけで過ごすスタイルは、特に欧米・オーストラリア・シンガポールなどの旅行者には当たり前になっています。「現地払いのみ」という対応は、こうした旅行者にとって「自分たちのことを想定していない施設」という印象を与えてしまいかねません。

多言語予約システムにオンライン決済機能を統合することは、外国人旅行者が安心して予約を完了するための、もうひとつの重要な柱です

訪日外国人は「事前決済」を前提に旅を設計しています

旅行の予約プロセスは、出発の数週間前から始まります。フライトをカードで予約し、ホテルをカードで押さえ、現地のツアーやアクティビティもカードで事前決済する。旅行者にとって「予約=カードで支払い済み」という感覚は、OTA(オンライン旅行代理店)の普及とともにすっかり定着しています。

この習慣が意味するのは、事前にカード決済できない体験は「旅程に組み込みにくい」ということです。特に複数の目的地を巡るバックパッカーや、タイトなスケジュールで動くビジネス旅行者にとって、「当日現地で現金払い」という条件は計画に組み込む際の障害になります。

さらに見落とされがちな問題があります。事前決済がなければ、予約はあくまでも「口約束」に過ぎません。旅行者が当日に現れない「ノーショー」が発生しても、事業者には何の補償もありません。少人数制の酒蔵見学や、定員4〜6名の禅体験・サムライ体験では、1組のノーショーが当日の売上に直接影響します。事前決済の導入はノーショー対策として、経営上の安全網にもなるのです。

OTA手数料との比較で見えてくるコストの現実

多くの体験事業者が外国人予約をOTA経由で受けている理由のひとつは、「OTAにはもともと多言語対応と決済機能が備わっているから」です。確かに、Viator・Klook・Airbnb Experiencesは英語・韓国語・中国語に対応しており、クレジットカード決済も完備されています。

しかし、その利便性には相応のコストがかかっています。

OTAの手数料は一般的に売上の20〜30%です。仮に1名あたり8,000円の酒蔵見学ツアーを月間50名に販売した場合、売上は40万円ですが、OTAへの手数料として8〜12万円が引かれます。年間に換算すると96〜144万円がOTAへの支払いになります。

自社の多言語予約システムにオンライン決済を組み込んだ場合、決済手数料は売上の3〜4%前後です。同じ条件で計算すると月間の手数料は1.2〜1.6万円、年間で14〜19万円程度に収まります。

OTA経由と自社直接予約では、年間で80万円以上のコスト差が生まれる可能性があります。これはスタッフの人件費や設備投資に回せる金額です。

もちろんOTAには集客力という大きなメリットがあります。すでにOTAを利用している場合、すぐに完全撤退する必要はありません。ただ、「OTAで見つけてもらい、自社サイトで直接予約してもらう」という導線を育てることで、OTA依存を徐々に減らしていくことは、どの体験事業者にとっても中長期的な経営戦略として重要です。

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