2025年1～10月 訪日外客数累積レポート

市場分散化の重要性

近年、中国政府による日本への渡航回避呼びかけなど、地政学的な要因がインバウンド市場に大きな影響を与える可能性が高まっています。こうした不確実性の中、特定市場への過度な依存は大きなビジネスリスクとなります。2025年1～10月のJNTOデータは、インバウンド市場の分散化が既に効果を上げていることを明確に示しています。

データが示す分散化の成功

最新の統計から、市場分散化が有効に機能している具体的な証拠が読み取れます：

1. 欧州市場の急成長

• 欧州全体で前年比26.4%増と、全地域中最高の成長率を記録
• スペイン（35.8%増）、イタリア（32.7%増）、ドイツ（31.8%増）が軒並み30%超の伸び
• 英国は455,200人、フランスは390,100人と、それぞれ単独で主要市場として確立

2. 新興市場の顕著な拡大

• インドが前年比36.5%増で262,800人に到達し、急成長市場として台頭
• メキシコが28.8%増と北米で最高の成長率を記録
• インドネシア（27.6%増）、マレーシア（24.5%増）など東南アジア新興国の力強い成長

3. 北米市場の安定的成長

• 米国が22.1%増で2,733,400人と、中国に次ぐ第2位の単独市場を維持
• カナダ（17.5%増）を含む北米全体で3,464,400人に達し、東アジアへの依存を緩和

4. 東南アジア市場の多様化

• タイ、シンガポール、フィリピン、ベトナムなど、複数の市場がバランスよく成長
• 地域全体で3,928,500人と、単一国への依存ではない分散型成長を実現

多言語化による市場開拓の必要性

このデータが示すように、世界中の多様な市場が日本への関心を高めている今こそ、多言語化投資の最適なタイミングです。英語、中国語、韓国語に加えて、スペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語など欧州言語、さらにはタイ語、インドネシア語、ヒンディー語など東南アジア・南アジア言語への対応が、地政学的リスクに強い持続可能なビジネス基盤を構築します。

特定市場への依存から脱却し、グローバルに情報発信できる体制を整えることで、一つの市場で問題が生じても他の市場でカバーできるリスク分散型のインバウンド戦略が実現できます。多言語ウェブサイトの構築は、もはや選択肢ではなく、変動する国際情勢の中で生き残るための必須投資なのです。